彼氏

 

 

 

たまらなく彼のことが好きだ。

 

 

飽き性な私がこんなに好きでいられるなんて自分でもびっくりしているし

なんなら日を重ねるごとに好きな気持ちが増している。

 

 

毎日毎日嫌気が差していた。

高校の時に付き合っていた彼氏と別れてから、なんだか全部がどうでも良くなって遊び歩いていた。

高校生の頃からいっちょまえにせフレが居たし

門限もなかったから朝帰りも度々した。

 

専門学校に進学して加速した。

寂しさを埋めるために男と遊んではバイバイしてから虚しくなってそんな自分が嫌になる繰り返しだった。

何回か彼氏が出来たりもしたけど振られたり、私がなんだか好きになれなかったりで結局長続きはしなかった。

 

本気で好きになった人には相手にもされず

毎回泣いてばっかりで

男なんて信用出来なかった。

 

そんな時専門学校の友達の紹介でバイトを始めた。

バイト同士すごく仲のいい職場で、友達が居たおかげもあって人見知りの私でもみんなと仲良くなるのにそう時間はかからなかった。

 

1人の男の先輩が居た。

私が住んでいるところで1番頭のいい大学に通っていて現在は院生。

バイト歴も5年目で仕事中も真面目だし、すっごい早口で喋ってくるからちょっと怖いなあなんて思ってた。

 

私を紹介してくれた友達とその先輩が仲良かった事もあって、私も先輩と少しづつ話すようになった。

 

私はその先輩のことをいつの間にか好きになっていた。

何回か遊んでいるうちに気付くさり気ない優しさや一緒に話していて落ち着くところ、歳上なのに犬みたいで可愛いところに惹かれていた。

 

そのバイトを始めてからも遊び歩いていた私は、先輩には遊んでる女だと思われたくないなと思って好きだと言うことを自覚した日からキッパリ遊び歩くのを辞めた。

 

出会い系はアカウントを削除したし

せフレの連絡先もブロックした。

仲のいい女の先輩に良く連れていかれていたクラブにも行かなくなったし

相席だって行かなくなった。

 

周りの人には「偉いね」「変わったね」って沢山言われた。

私だってびっくりだ。

あんなに遊んでいたのに、1人の先輩の為にここまで変われるんだから。

 

2人で遊びに行く日はめちゃくちゃ緊張した。

どんな服を着ていこうか、化粧はどんな感じにしようかな、会ったらどんな話をしようか。

 

久しぶりにそんなこと考えて、私ってちゃんと女の子なんだなって思えた。

ワクワクしたしドキドキしたし楽しかった。

 

2人で遊んだ日はまた次遊ぶ日を決めてバイバイした。

お互いバイトもそれなりに出勤していたし学校もあったから2週間に1回くらいしか遊べなかったけど

それでも遊ぶ日を楽しみに毎日頑張れた。

 

2人きりで遊んでも手も握らないで

終電逃しても家まで車で送ってくれて

飲みに行って他の人達に置いていかれて2人きりにされた日、始発まで時間潰して行きなって家に入れてくれた時も

私に暖かくしなよって毛布をかけて近くで寝てくれて

手を出してこないところが好きだった。

 

当たり前なのかもしれないけど

私にとっては当たり前じゃなかった。

 

ヤリたいだけの見え見えの嘘

「かわいいね」「好きだよ」「会いたい」

みんな下心丸見えだった。

 

先輩は少しもそんなこと無かった。

 

この人なら信じたいってそう思えた。

 

 

「私が好きって言ったらどうしますか?」

 

「ん〜それは俺もちゃんと気持ち伝えなきゃなあ〜」

 

「まあ私からは言いませんけどね(笑)」

 

「その時は俺からちゃんと言うから待っててね」

 

 

なんてやり取りをしてから

何回遊んだだろうか。

今日こそ言ってくれるかなあ、いつかなあって毎回考えてた。

 

ドライブに連れて行ってくれた日だった。

 

本を読むのが好きな私を

ちょっと遠い所にあってオシャレな蔦屋書店に連れて行ってくれた。

帰りはかわいいカフェで晩ご飯を食べて

夜景が見れるところに寄った。

 

すっごい楽しくて家までの道があっという間だった。

バイバイするのが寂しくて躊躇いながらも

「運転ありがとうございました、またどこか連れていってくださいね」って車のドアを開けようとした私に先輩が声をかけた。

 

「ちょっと待って、、、」

 

「俺さのんちゃんと一緒に居てすごく楽しいなあって思うし、落ち着くなって思ってて、それでさ好きになっちゃった。よかったら付き合って欲しい。」

 

 

恥ずかしくて先輩の顔を見れなかった。

 

「はいっ。」

 

 

「っはあ〜〜、よかった。ありがとね、これからもよろしくね。」

 

って頭ポンポンされた。

 

 

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あの日からもうすぐ半年が経つ。

 

今でもたまに、遊び歩いていた

自分を思い出して嫌気がさす。

 

はっきり口にはしないけど

風の噂で遊んでいたことを知っているであろう

彼氏にも心配かけてると思う。

 

 

 彼氏との会話をきっかけに昔のこと思い出して

彼氏の前で泣いてしまったことがある。

 

「〇〇さん(彼氏)に私なんて釣り合わないよ、、、」

 

すると彼氏は

 

「俺が好きでのんちゃんのこと選んだんだよ。俺は今ののんちゃんが好きだから大丈夫。安心して。」

 

って抱きしめてくれた。

 

 

私が泣いても面倒くさがらずに

ちゃんと向き合ってくれて

泣き止むまでずっと抱きしめてくれて

本当に素敵な人に出会えて良かった。

 

 

彼氏は来年就職で上京する事になるだろうから

将来のことなんてどうなるか分からないけど

私はずっと一緒にいたいと思うし

隣で支えてあげたい。